戯曲への道のり

 「台本を書きたい、それも今までとは違う方法で・・・。」


私は2017年現在、「台本を書く」というモチベーションが変化してきている。
今までは、どんな題材においても「思い通り描く事ができた」
というより、どんな些細な題材であっても、「たった一文字」でも書き始めれば、舞台にて上演可能な「物語」を完結する所まで至る事ができた。
だが、今の私は、そもそも「描く題材」そのものを探索している状況だ。

 

当然の事ながら、「描く題材」とはあらゆる可能性がある。

〇ヒット・売れる可能性のある作品(ファンの方が増えそうな等)
〇社会的的背景を描いた作品
〇個性的なキャラクターが活躍する作品

 

そういった所から「台本を書く」モチベーションを構築する。(それはつまり、「自分自身を説得するという行為」であろう。)

 

当然ながら、「台本」は簡単には書けない。ましてや、”上演する目途がない”や”金銭が発生しない”など

最後まで書き終わらせる事は非常に困難なのだ。

 

だから、「書くぞ!」という心意気を維持できる”条件”を作らなければならない。

途中で”挫折”しない為に。

 

さて、現在考えている物語はこうだ。

 

【遺言(仮)】

富豪老人(榊原75歳)と若くして結婚した才女・今日子(31歳)。

今日子は、榊原と何不自由のない暮らしをしていた。

 

今日子にとって榊原との結婚は財産が目的だったのか?或は不自由のない暮らしが目的だったのか?

それは今日子自身にもわからない。

 

常日頃、回りからは”遺産目的の女”と陰口を叩かれていたが、今日子自身も旦那である榊原もその事を気にせずに暮らしていた。 榊原も今日子も、結婚生活は幸せだったのだ。

何故なら、今日子にとって結婚とは、「男女が仲睦まじく普通に生活を営む事」その一点のみだったからである。
2人で住むには、丁度良い大きさと、美しい庭があるこの家を今日子は何より大切にしていた。

毎日、朝食を作る事、庭の手入れをする事。夫が帰宅して読書している姿を眺めている事。
そういった平凡な生活が今日子には幸せだったのだ。


44も歳の離れた2人に子供を授かる事は難しかったが、夫との夜の営み不定期ながらもあったし、榊原は果てる事なく、眠りにつく。今日子はそれで満足だった。今日子自身も榊原自身も2人が愛でれているのであれば、何の不満もなかった。

 

「いつの日か榊原の死を見届けるのであろう。」ふと、時折脳裏をよぎってはいたが、「それは、その時になったら考ればよい」そう思っていた程度である。

 

今日子は「極平凡な生活を望む普通の女性」それを、本人自身も理想と考えていたし、回りからもそう思われたいと願っていた。

 

遂に榊原が死を迎えた。

ある朝、普段通り、朝食を作り、榊原を寝室に起こしにいくと、榊原はベッドの上で息をしていなかった。

永眠したのである。

 

かかりつけの医者も、葬式の段取りも、全て榊原と会社が準備していたので、段取り良く進んだ。

 

葬式が終わる頃。榊原の顧問弁護士が今日子に声を掛けた。財産分与の話である。


今日子は「榊原にどのくらいの資産があるのかわかならいが、一生このまま未亡人としてこの家で暮らそう。残ったら、慈善団体に寄付でもすればいい。」と考えていたのだが。贅沢を望んではいなかった。

顧問弁護士から次のような話をされた。

「榊原様から、財産分与の目録とビデオレターが届いております。全ては今日子様のご意思に沿ってもらえれば・・・。
との事ですが、何卒、このビデオレターだけは拝見して貰いたいと榊原様から仰せつかっております・・・。」

 

1年前の春の位であろうか?この家の庭先で撮影された夫の姿が映像には写っていた。

 

「今日子、今まで10年間も幸せな夫婦生活を営ませてくれてありがとう。心から感謝している。私の金品等の財産は全て、今日子に託そう。しかし、2人で10年間暮らしたこの家を譲るのだけは条件がある。

私が推薦する3名の男性がいる。この3名の男性の中から一人を選び婚姻を結んだ場合のみ、この家を君に託そう。
それが、私からの条件だ・・・。」

10年間夫と暮らしたこの邸宅を、引き続き住むためには、夫の選んだ3名の男性の中から、1人選ばなければならないという条件だったのだ・・・。

 

今日子は、この邸宅を失いたくないという気持ちはある為でもあるが、

しかし、夫が選んだ3名の男性とはどんな男性なのか?という事が気にかかり、婚姻するかどうかは別にして、

その3名に一旦、会ってみようと考えたのである・・・。

 

ここまでが、今考えている「台本」のプロットである。

どうやら、現在、私は、「家族とは何か?」「結婚とは?」「夫婦とは?」「女とは?」といった事をテーマに、作品を作りたいようなのだ・・・。